Keep the Shaking Feeling

マージー・ビートの重要バンド

マージー・ビートのシーンを語る上で、The Swinging Blue Jeans(スウィンギング・ブルー・ジーンズ)は外せない存在である。
彼らは地元のダンスホールやクラブで演奏を重ね、ドイツに渡りハンブルグのスター・クラブで人気を博す。
その後、キャバーン・クラブの専属バンドとなり、自分たちのイベント『Tuesday Guest Night』を開催していた。
彼らが最初期にゲストとして招いたバンドの一つにビートルズもいた。

BluegenesからBlue Jeansへ

1958年にRay Ennis(レイ・エニス)を中心に結成された。アメリカのロカビリー歌手ジーン・ヴィンセントにあやかり、当初はブルージーンズと名乗っていた。
後に現在のバンド名へ改名し、スーツ姿からブルージーンズ姿へと衣装も一新した。

初期メンバーは次の4人。彼らがライブバンドとしての基盤を築いた。
Ray Ennis(レイ・エニス):ギター、ボーカル
Les Braid(レス・ブレイド):ベース、キーボード
Norman Kuhlke(ノーマン・クールク):ドラマー
Ralph Ellis(ラルフ・エリス):ギター

彼らの持ち味は、ハンブルグのスター・クラブやキャバーンで鍛えられたエネルギッシュなビートにある。
当時のダンスホールやクラブで演奏された荒々しくもロックンロールの名に恥じない疾走感のあるビートは、熱狂させるのに十分な熱量を持っていた。
演奏に埋もれないシャウトも聴きどころで、演奏経験に裏打ちされた実力を感じる。
ロックンロールに留まらず幅広いジャンルも取り入れており、ポップなメロディの融合やカバーも洗練されたアレンジに定評がある。
ライブで培った経験こそが彼らの音楽を唯一無二のものにしていた。

代表曲から聴きどころまで

It’s Too Late Now

レイ・エニス作詞作曲のデビュー曲。全英30位の中ヒットだが、今聴いても手遅れではない。

Hippy Hippy Shake

全英2位を獲得したヒットナンバー。原曲はチャン・ロメロ。エニスのシャウトがオリジナルに勝るとも劣らないワイルドな聴きごたえ。

You’re No Good

紹介した前の2曲とは打って変わって、バラードの傑作と名高い名曲。全英3位を記録し、リンダ・ロンシュタットなどもカバーしている。

舞台裏エピソード —“ボールペン事件” 

BBC『Top of the Pops』の記念すべき第1回放送の収録中にローリング・ストーンズと殴り合いの喧嘩をしたエピソードがある。
きっかけはキース・リチャーズの私物のボールペンをスウィンギング・ブルー・ジーンズのメンバーの一人がサイン用に勝手に借りたのが発端となり、口論がエスカレートし、殴り合いに発展したとされる。
『Hippy Hippy Shake』の大ヒットの裏側で起きた舞台裏の事件だが、皮肉にも有名な逸話として語り継がれている。

メンバーチェンジとその後、チャンスとすれ違いの歴史

デビュー後しばらくは大きな成功に恵まれなかったが、リヴァプールのジーンズ・メーカーの支援を受け、海賊ラジオ・ルクセンブルグの番組『Swinging Time』のホストを務めたことで知名度を伸ばしていく。
グループ最大のヒット曲『Hippy Hippy Shake』がアメリカで24位を記録し、これをきっかけに『The Ed Sullivan Show』への声が掛かるがヨーロッパツアーの契約が残っているのを理由に出演を辞退した。
この判断がアメリカでさらなる成功を広げる機会を逃した一因とも言われている。
また、1966年に初期メンバーのエリスがバンドから抜けて、同じリヴァプールバンドのエスコーツからテリー・シルヴェスターとマイク・グレゴリーが加入した。
新編成になってから再スタートを切るがヒットには恵まれず、『Don’t Make  Me Over』が最後のヒットとなる。
現在もメンバーチェンジを重ねながら活動を続け、ヨーロッパ各地のクラブを中心に演奏を行っている。

マージー・ビートの“ライブの熱”を閉じ込めた音楽

1960年代は音楽の流行が目まぐるしく変化した時代。ビートルズ以降、ロックはアルバム志向や実験性を強めていく。
それに伴い、マージー・ビート一辺倒だった彼らのスタイルは徐々に時代の中心から離れていった。
それでもスウィンギング・ブルー・ジーンズはライブバンドとして磨き上げた演奏力を武器に、自分たちのスタイルを貫いた。
元々スキッフルをルーツに持つ彼らは、サックスやホーンのパートをギターで表現するなど、限られた編成でも工夫を凝らし、独自のアプローチを行っていた。
派手な革新性はないが、素朴で力強いエネルギーでクラブで観客を踊らせ続けたライブバンドだからこその熱量が彼らの魅力である。彼らの音楽には、当時のクラブの空気がそのまま息づいている。
マージー・ビートを知るならぜひ一度体感してほしい一組だ。

次回はThe Merseybeats(マージービーツ)を紹介

その前にロックの海を少し寄り道することもあります。お楽しみに。