Last Night, We Didn’t Make Little Girls Cry

異色であり洗練されたマージービート

名は体を表すと言うとおり、The Merseybeats(マージービーツ)は、リヴァプールを代表するグループの一つである。ビートルズとは友人でもあり同時代を駆け抜けた仲間でもあった。
少々インパクトに欠けるバンド名だが、サウンド面では他とは一線を画していた。
彼らの持ち味はソフィスティケート・サウンドで都会的で洗練されたポップな音作りが特徴で、マージービート全盛の当時では異色の存在として知られている。

頭一つ抜けたサウンドと垢ぬけたファッション

1960年当初はThe Mavericks(マーベリックス)として活動しており、Tony Crane(トニー・クレーン)が共通の友人を介してBilly Kinsley(ビリー・キンスリー)と出会い、結成。1961年9月にThe Pacifics(パシフィックス)となる。
1962年にはマージービーツとなり、この時期にAaron Williams(アーロン・ウィリアムズ)とJohn Banks(ジョン・バンクス)が加入した。

初期メンバーは次の4人。この4人がマージービーツの礎を築いた。
Tony Crane(トニー・クレーン):ボーカル、ギター 
Billy Kinsley(ビリー・キンスリー):ボーカル、ベース 
Aaron Williams(アーロン・ウィリアムズ):ギター
John Banks(ジョン・バンクス):ドラム

ポップで都会的なサウンドやバラードを得意としつつ、エネルギッシュなロックンロールや粋なR&Bも巧みに演奏している。
どの曲にも共通して言えるのが、テンポに関係なくクレーンとキンスリーのハーモニーが際立っていること。
また、彼らは音楽面だけでなくビジュアルも一線を画していた。 スーツを基調としながらフリルを取り入れたスタイルで女性人気も高かった。
洗練された音楽だけでなくファッション性からヴィジュアル要素込みで魅了したバンドの先駆け的存在でもある。

代表曲から聴きどころまで

It’s Love That Really Counts

原曲はシュレルズのカバー。デビューシングルで全英ポップチャートで24位を記録したが、記録だけが大切ではない。

I Think of You

初のゴールドディスクを獲得したナンバー。傷心の男の心情をクレーンが美しく歌い上げている。

Don’t Turn Around

ジョン・グスタフソン加入後のヒット曲。泣き出しそうな別れの歌詞と弾むようなキャッチーなサウンドとの対比が美しい。

幸先の良いスタートと陰り

1963年のデビュー曲『It’s Love That Really Counts』でトップ30入りを果たし、翌年にはBBCの『Jukebox Jury』でビートルズから高く評価され、シングルはトップ5入りを果たした。
しかし創始者メンバーのキンスリーが脱退。突然のアクシデントだが、後釜としてベテランのジョン・グスタフソン(The Big Three)がベースとボーカルとして参加した。
グスタフソンはもっとオリジナル曲を作るように促し、クレーンと共にバンドの曲を書き始める。


※Jukebox Jury…1959年から1967年にかけてイギリスのBBCで放送された音楽テレビ番組。ビートルズのメンバー全員が審査員として出演していたことで有名。

イタリアでの活躍とアメリカでの不発

キャバーン・クラブでは定期的にステージに立ち、彼らは同時代のどのバンドよりもビートルズと共演している。
イタリアでは自身のテレビ番組『The Merseybeats Show』 でヘッドライナーを務め、現地で高い知名度と人気を得ていた。
1965年にフォンタナ・レコードのアメリカ支社より『I Think Of You』をアメリカでリリース。短期間のプロモーションツアーを行ったがアメリカではヒットには至らなかった。
バンドの財政状況への関与が深すぎたことを理由に、1965年末にグスタフソンはバンドの経営陣から解雇されている。これに対してクレーンはマージービーツを解散させている。
2年弱という短い期間で彼らは解散をしているが、このあとも何度か再結成と解散を繰り返し、メンバーチェンジも経て現在も活動中である。

マージービート時代の象徴として

冒頭でも述べた通り、彼らの高い演奏力とクールで洗練されたサウンドは、当時のマージービート勢の中でも頭一つ抜けていた。
しかし、早すぎるメンバー交代、ヒット曲の多くはカバーであること、マネジメントの不安定さなど不運が重なり商業的な成功を持続させられず、次第に失速していった。
メジャーシーンでの活躍の機会は恵まれなかったが、楽曲のクオリティは本物でメロディアスなポップバラードとは高い評価を得ている。
エヴァリー・ブラザースを想起させる息の合った美しいハーモニーとアルペジオを巧みに扱い織り交ぜたサウンドで華やかに仕立て上げたサウンドは今なお色褪せない。
今一度、振り返って聴き直してみてほしい。

次回はThe Crickets(クリケッツ)を紹介

その前にロックの海を少し寄り道することもあります。お楽しみに。