Rocking and Rolling

ロックは、最初からロックだったわけではない。

揺れながら形になっていった、名もなきブリティッシュ・ロックの系譜をたどると聞こえるのは安いギターに洗濯板、空きビン、ティーチェストベース。どこにでもある日用品を用いた家庭・学校・倉庫で鳴らせる音楽…イギリスのロックの源流となる音は、ある身近な物から生まれた手作りの音が始まりだった。

ジャズ、ブルース、カントリー、フォーク。

こうしたロックの基盤となる要素を取り入れたスキッフルは、アメリカのルーツを再解釈した若者たちを中心に、イギリスのロックとして産声を上げる。
ロック以前の民主化された音楽”スキッフル”という始まりと通過点から、ブリティッシュ・ロックは始まった。

誰もが手軽に安価で始められるスキッフルは当時の若者たちを刺激し、熱中させるには十分だったが、そこでまた新たな可能性が現れた。
ロックンロールの開拓者、バディ・ホリー。

一人は魔法が掛けられたようだったと語った。もう一人はインスピレーションを得たと興奮した。
そしてもう一人は自分も彼みたいにしてみようと行動に移した。

バディ・ホリーは一人で成し遂げた。スキッフルは皆で始められる。
この2つが重なったことで、 ブリティッシュ・ロックの土壌ができた瞬間だった。

スキッフル自体は完成形ではなく通過点に過ぎないが、当時、ここを通らない人はいなかった。

スキッフルは、後にロックを鳴らすための最初に音を出してみる場所。
名前は残らない、曲名も残らない。でも人々の心には残った。

条件はすべて揃っている。あとは始める一歩を踏み出すだけ。

こうして、誰もが最初に鳴らした音―スキッフルを卒業してロックになろうとした世代たちが動き出したのだった。

彼らの名前は、まだ語られていない。