Not Fade Away
最初は真似だった。
シンプルな音は親しみやすく、派手である必要もなかった。彼らはお手本をなぞるように同じ音を鳴らそうとした。
だが、鳴らした音はまた違うロックンロールとして確立した。
はじめは真似て、次に本格的な模倣、そこから転じて形を変えた。
所変われば品変わる。コピーはいつしか別の生き物になっていた。
当時の彼らからしたら遠く離れた海の向こうの生活は知る由もない。
ブルースを捉えることはできても文脈として捉えきれなかった。
楽器も音響設備も含めて情報手段も限られた環境。
分業などあってないような状態。
個人から複数へと結束した。
知らなかったから違った。
足りなかったから変えた。
だから、同じにはならなかった。
日常のどこか重く伸し掛かる空気は、皮肉とちょっとした機転を利かせて。
捻くれた知性で新たな視点を見出して、荒々しくも独自の美学と感性を磨く。
米国のロックンロールは、英国で別の生き物になった。
海を渡ってきた音は姿を変えて図らずも再び、海を渡った。
孵りきらなかった金の卵はわずかに形を変え、やがて羽化した。
海を越えた一枚のレコードから始まった物語は、今も終わらずにどこかで鳴り続けている。
それは一人のものではない。だがあの時掛けたレコードの続きだった。