Rave On
餅は餅屋、パン屋にパンを焼かせる。
古今東西、物事も芸事もその道の人間に任せるのは確実なこと。
プロのソングライター、アレンジャーが制作に専念して歌手は歌うことに専念する。質の高い商品を提供するには分業制が当たり前だった時代。
作家はビルの一室で旋律を量産し、歌手は歌に徹する。分業は効率的で無駄がなかった。
様々な人間の手が加わった作品はパッケージされた後、正しく商品棚に陳列される。
だからこそ、この様式美は壊す意味があったのだ。
自ら作詞作曲を行い、自ら歌う。
単なる創作意欲で収まらずに裏方の仕事と表に立つ主導権、どちらも譲ることなく、録音の音像にも関与した。
多重録音という実験的な手法にも踏み込み、プロデューサーとしても挑んだロックンローラーは彼が初めてだろう。
彼は作ること、歌うことに留まらなかった。
一人の演奏家であり、作家であり、プロデューサー的視点を持つ存在であった。そして、工場制ポップスの領域に切り込んだ一人だ。
スターとバックバンドのスタイルに一石を投じたことで、その名の通り一介のバックバンドが集団として名前を持つ権利を得た。
彼は怒りを歌にしたわけではないが、行動としてやってのけただけだ。
作家は裏方、スターは歌うだけの時代に一石を投じたことで小さな波紋は、やがて海と時代を超えて次第に大きく広がっていく。
等身大のヒーローがやって見せたロックンロールは、遠く離れた港町や工業都市の若者たちにもできると自信を持たせてくれた。