Rock around with Ollie Vee

彼は革命を起こそうとしたわけではない。ただ、好きな音を好きな姿で鳴らしただけに過ぎない。
だが、その飾らない姿勢に少なからず救われる人間がいた。そして一歩踏み出せた人間がいる。
いつの時代も物事も、きっかけはほんの些細なことから動き出す。
彼が許した未来は多くの若者たちに「主張していい」という感覚と、自らの手で創りだす資格を与えた。

水面に石を投げてできた小さな輪は、次第に大きな波として広がっていった。
ロックは不良の音楽。
ロックは不良であるべき。
対立し続けた、相容れない価値観と認められない自由な意思は過去のものとなった。その日、一人の青年の在り方が凝り固まった常識を塗り替えた。
都合の良い大人の期待と手の届かない若者の幻想。それらを静かに打ち崩したからだ。

10代の彼らがなぜ手を伸ばせたのか?
答えは簡単だ。初めてと、始めては誰しもが真似をしていた。
話し言葉、ペンの持ち方、ちょっとした時間の潰し方。
憧れの存在であれば尚更、その背格好からギターのスタイルまで真似せずにはいられなかったからだ。
彼の鳴らす音は、基本的な3コードを軸にしたフィルやソロで構成されていた。しかし、料理の世界には次の有名な言葉がある。
「卵に始まり卵に終わる」
この言葉の通り、基本的でシンプルながらも完成されたスタイルを極めるのは容易ではない。
音楽も同じだ。シンプルな構造だからこそ、鳴らす人間の個性が露骨に表れる。
だが、若い彼らが挑戦する理由には十分。作る楽しさと喜びは誰も簡単には止められない。

長年マイナスのイメージにあった、眼鏡=欠点の評価も変わった。
10代だった彼らの誰もがバディ・ホリーに注目していた。バンドというスタイルもさながら、彼の見た目もまだ年若い彼らに影響を与える。
眼鏡を掛けてロックを鳴らす選択肢はそれまであり得なかった。
強さと反抗を主張していたロックを強さだけで振りかざすことなく、若いながらもプロとしてステージに立ち振る舞う。
その内の一人はしばらくして眼鏡を掛けて仲間たちの元に現れた。実は目が悪いと初めて仲間に打ち明ける。
マイナスだと感じていた要素は魅力に変わった。ロックの外見は一つだけではないと前向きにさせてくれた。
彼が明言したわけではないが、欠点も魅力の内だと教えてくれた。

眼鏡を掛けたロックンローラーの登場は、あるべき姿から価値観までも上書きしていった。